会報 210号 05′ 03/01

目次

巻頭随想
京都・鞍馬寺「百の義経」展を企画監修して D会員(OT) 澤村洋二
第19回高校生デザイン賞
第19回高校生デザイン賞
審査評
「第19回・毎日・DAS高校生デザイン賞」 審査委員長 佐野正一(副理事長・建築家)
PLAZA
新年交流会にぎわう
4カ国が出品 デザイン国際交流展
展覧会あれこれ
シルクストール展
福島さん優勝 新春囲碁大会
ファッション講演会開く
DASサロンはおまかせ 三洋電機が冷蔵庫寄贈

巻頭随想

京都・鞍馬寺「百の義経」展を企画監修して

D会員(OT) 澤村洋二

人生とは不思議なものである。思いもかけないことにぶつかるが、振り返ってみれば、それも必然であったような気がする。だが、必然的であるからといって、出くわすものでもないのだが。 京都の鞍馬寺は開創千二百年の古刹であり、義経が幼少年期の十年を過ごし、天狗が兵法を伝授したという伝説で良く知られている。先に、NHKから大河ドラマ「義経」の撮影などで鞍馬寺に協力要請があった際、NHKの番組への協力とは別に、義経展を鞍馬寺で開催することになり、長い縁がある私に、義経展の企画監修と義経論考執筆の依頼があった。
何故こんな運びになったかというと、現在、一般に流布している義経像は鞍馬寺にとっては違和感があり、私も同様の想いを持っていたからだ。
その違和感とは、鞍馬山の地面が語りかけてくる義経像は、世間一般に流布している義経とは全く違っているのである。現代の常識的な義経像とは、戦争は上手いが、政治的に無能で、新しい時代を切り開く武家政権の樹立に腐心する兄頼朝の苦労も知らず、大陰謀家、後白河法皇の権謀術数にまんまと乗せられ、任官し、頼朝に疎まれ、死に追いやられた人物というものである。
だが、その常識化した義経像を覆すのは容易なことではない。反証するには、敗者である義経の歴史資料は少なく、その上、残された歴史資料は勝者によって書かれた敗者の姿であるという側面をもっている。そこで複数の歴史資料を比較検討し、そこから論理矛盾を探りだし、その矛盾と情報のゆがみから隠された真実を推論するという作業になった。
正しく資料の山を読み潰して行く作業の中で、意外な発見もあった。それは、義経が亡くなった59年後、鎌倉幕府の正史「吾妻鏡」に執権北条時頼の言葉が記載されている。その記事は「故頼朝公は生前、義経にさしたる罪は無かったが、自分の宿意によって滅ぼしたとおっしゃっていた」という内容である。頼朝は敵方である筈の鞍馬寺にも刀を奉納しており、頼朝自身が、幕府樹立のための最大の軍功を上げた弟を殺したことに、複雑な思いを抱いていたのだろう。
展覧会(平成17年3月1日~12月11日)のタイトルにした「百の義経」とは、歴史的に義経像が変遷しており、義経像はその時代を写す鏡であり、ひいては現代の義経像は戦後60年間の日本の戦後思想、文化を映し出す鏡であるという意味である。
真実の義経像の探求は、戦後思想の総括的批判や新たな日本学構築につながるであろう。展覧会は国宝、重文などの多数の現物作品と、縦230、横85センチの木製パネル230点で構成されている。また、展覧会は鞍馬寺霊宝殿(博物館)の展示だけではなく、義経史跡を含めて、鞍馬山全体を歴史自然ミュージアムとしている。

1949年生まれ、絵画、彫刻、美術展企画監修、企画デザイン、台本演出、執筆など多分野で活動している。出版予定は「百の義経」「インターナショナル・ジャパノロジー」など。

第19回高校生デザイン賞

第19回高校生デザイン賞
全国の高校生が感性と技術を競う「第19回毎日・DAS高校生デザイン賞」コンクール(毎日新聞社、DAS主催、サントリー協賛)は1月27日、大阪市南港のATCビルITM棟10階で総合審査を行い、第1次(部門別)審査に合格した122点の中から最優秀「銀の卵」賞1点、部門賞6点、佳作6点、入選89点、学校賞1校を決定した。総応募数は前回より38点多い286点だった。 入賞・入選作品は2月18日から21日まで今回初めて、大阪市港区のサントリーミュージアム[天保山]で公開展示された。表彰式は展示初日の午後2時から同ミュージアム5階「展望ルーム」で行われ、佐野正一審査委員長の講評の後、毎日新聞大阪本社副代表の深井麗雄氏とサントリーコーポレートコミュニケーション本部副本部長兼文化事業部長の若林覚氏から正賞、副賞(サントリー賞)の賞状、賞品が手渡された。学校賞には六甲アイランド高校に、賞状と副賞(コクヨ賞)が贈られた。

審査評

「第19回・毎日・DAS高校生デザイン賞」

20081020-210_01

審査委員長 佐野正一(副理事長・建築家)

頼もしい技術水準の高さ
今年の高校生デザイン賞には、全国から昨年とほぼ同じ13校286点の参加があった。デザイン志向の高いことに変わりがなく、また総じて技術水準はハイレベルに進んでいると感じられて頼もしいと思う。
応募作品は昨年末に締め切られ、部門別にDAS会員の専門審査員による第一次審査で、6部門122点が選ばれ、1月27日の第2次の総合審査で、グランプリ「銀の卵」賞1点、部門賞6点と佳作6点の入賞作品と入選作品89点を選び、さらに入賞・入選作品多数を出した神戸市立六甲アイランド高校に学校賞を贈ることを決定した。入賞・入選者に心からお喜びを申し上げたい。 「銀の卵」賞に輝いたインテリア部門の京都市立銅駝美術工芸高校、佐藤慶太さんの「99+1」は、椅子を主題に現代の椅子デザインパターン99点を自らスケッチし、100点目は見る人にデザインを提案してもらうプランが説得力に富むと高く評価された。小型模型による3点の秀作を付している。
次に部門賞。グラフィック部門の神戸市立六甲アイランド高校、ファーマン力さんの「吸い過ぎ注意」は、「銀の卵」賞同様の高い評価を得た作品。たばこの吸い過ぎの害を訴える内容をグラフィックの手法で率直、ユーモラスに表現した。インダストリアル部門の大阪市立工芸高校、奈須田友也さんの「高齢者用スポーツ三輪車」は、高齢者向けに安定性の高い三輪車の提案。簡潔で実用性の高い、細かな配慮の行き届いた秀作。インテリア部門の香川県立高松工芸高校、植松千尋さんほか5名共作の「MONOKURO」は、Tシャツ販売する店舗計画案で、パンダをキャラクターにして、楽しい展開を見せている。
テキスタイル部門の神戸市立六甲アイランド高校、坂本ゆいさんの「origin 」は花文様を染めあげた作品。アイディアが生まれる過程を花や虫の誕生に仮託し、練達した手法で描いている秀作。服飾部門の神戸市立六甲アイランド高校、石田彩乃さんの「Fine」は、雨上がりの空の美しさ明るさを服飾に込めた見事な作品。クラフト部門の神戸市立神戸工業高校、一瀬佐知恵さんほか5名制作の「パン」は、食卓に並ぶ食物、テーブルウエアを小物入れにして、木工技術を使って工夫を凝らした作品。いずれにもデザイン意識と表現技術の高さが評価された。 紙数の都合で、佳作・入選作品の評は割愛することをお許し願いたい。
本コンクール開催にご尽力下さった審査員、教育指導関係各位に厚く感謝申し上げる。

審査員(敬称略、◎は総合審査員)
【審査委員長】◎佐野正一【グラフィック】◎杉崎真之助、◎嶋高宏、奥村昭夫、前田和紀、牛島志津子【インダストリアル】◎飯田吉秋、◎森田力、添田允典、石橋利夫【テキスタイル】◎坂本忠敬、◎大東恒夫、片山葉子【インテリア】◎千田要宗、◎刈田晃、鬼田勲【服飾】◎中務頼子、◎立亀三沙、富本公子【クラフト】◎植松曄子、◎馬渡喜穂、寺田眞理子、広瀬カヤ子【総合】◎今竹翠、◎荒木茂(毎日新聞学芸部長)【教育現場】◎山﨑裕彦(大阪府教育センター指導主事)

PLAZA

新年交流会にぎわう

20081020-210_02

新年交流会
2005新年交流会が1月20日午後6時から、 大阪・西梅田のガーデンシティクラブ大阪「オリオンの間」に68人が参加して、開かれた。
佐野正一副理事長が「世界に政治の中心と文化の中心が異なる国は珍しくない。大阪も東京や名古屋に負けない元気を出そう」と年頭挨拶。谷川順一副理事長が「DAS創立50周年の来年秋を前に、今年は準備の大事な年」と乾杯の音頭とり、持松和弘・新年交流会企画委員長の司会で開会。
干支の「トリ」をテーマに色紙展が行われ、会場内に展示された作品を出席者全員が審査。理事長賞(1席)は、バンジョーを弾く鶏をきらびやかに描いた大森重志氏に輝いた。2席には佐々木煕氏、3席には杉崎真之助、野見康雄、巽正和、葉室三千子、広瀬カヤ子、浅田勝、嶋高宏、近藤年子の各氏が選ばれ、豪華賞品が贈られた。

賞品提供
コクヨファニチャー、サントリー、竹尾、原口、平和紙業、毎日新聞社(50音順)=ありがとうございました。

4カ国が出品 デザイン国際交流展

2004環太平洋デザイン交流展OSAKA(韓国DETRA主催、DAS後援)が12月17日から20日まで、大阪・南港ATCの大阪デザイン振興プラザ・デザインギャラリーで行われた。
これまで日韓のデザイナー有志で開いてきた展覧会を中国とオーストラリア在住のデザイナーに拡大して、4カ国で初めて開いた。日本から29名(うちDAS会員15名)、韓国44名、オーストラリア11名、中国10名の計94名が出品した。
初日の17日夕、ATCビルITM棟10階の「カフェピア6」でパーティが開かれ、韓国からDETRA会長の奉相均氏ら約20名のほかオーストラリアの出品者も出席し、DAS会員らとなごやかに懇談、交流した。

DAS会員の出品者
植松曄子、梅原豊和、奥村昭夫、喜多俊之、嶋高宏、志水善一、杉崎真之助、大門敏彦、高田雄吉、田村昭彦、夏原晃子、 西尾直、橋本繁美、藤田隆、馬渡喜穂(敬称略、50音順)

展覧会あれこれ

個展

杉崎真之助さん(GP)「アノニマ」1月17日~22日=番画廊
越智和子さん(TX)「JAPAN BLUE」3月7日~12日=茶屋町画廊
多井幸男さん(IN)「北欧風景など」3月14日~19日=ギャラリー「むん」(神戸市)
夏原晃子さん(CR)「Acrylic Illusion2005」3月14日~4月9日=信濃橋画廊
グループ展

岡信吾(S)、嶋高宏、大門敏彦(以上GP)、馬渡喜穂(CR)各氏ほか「デザイナーズ・コレクション・アクセサリー展」12月20日~25日=茶屋町画廊
岡野弘幹(OT)、岡信吾(S)、奥村昭夫、嶋高宏、杉崎真之助、大門敏彦(以上GP)、坪文子(CR)各氏ほか「アフガンの子供を救おう・PEACE」1月5日~13日=平和紙業ペーパーボイス
喜多俊之(ID)、馬渡喜穂(CR)各氏ほか「第6回くらしデザイン工房」2月17日~22日=近鉄上本町店
シルクストール展

恒例のDASクリスマス展が平成16年は「丹後ちりめんシルクストール展」と銘打って、12月13日から17日まで大阪市南船場の平和紙業ペーパーボイスで開かれ、15名の作品が展示された。
13日午後6時からオープニングパーティが展示会場であり、DAS会員、ゲストら約60人がビールやワイン片手に、懇談した。

福島さん優勝 新春囲碁大会

新年恒例の第30回DAS新春囲碁大会が1月15日午前11時からDAS会議室で開かれた。
世話人の一人の志水善一3段が体調を崩して出場できなかったが、昨年のような雪被害もなく、常連の8人が顔をそろえ、和やかにトーナメント戦を開始。決勝は前回優勝の奥村幸一氏と福島三雄氏の4段同士の対戦となり、福島氏が中押しで勝ち、5年ぶりの優勝を果たすとともに、5段に昇格した。
福島氏には世話人の山仲武士氏から理事長杯とサントリーウイスキーの角瓶復刻版と同リキュールのマカディアが手渡された。第30回を祝して、全員にサントリー・マカディアと先の環太平洋交流展の図録が贈られた。

参加棋士
山仲武士7段(TX)、芝野吉生7段(S)、福島三雄新5段(A)、森口武彦4段(ゲスト)、奥村幸一4段(参与)、谷口廣之3段(ゲスト)、郡司修三1級(同)、松井昭人1級(同)

ファッション講演会開く

平成15年秋にスタートし、今回で4回目となるファッション講演会が3月8日午後3時半から、 大阪市北区の毎日文化センター404号室であり、44名が参加した。
講師は4回連続の野口貴弘氏。「パリ・ミラノ・トレンド速報」と題し、2時間に渡って、最新のヨーロッパ情報を紹介。「この指とまれの時代は終わった。自己主張の流れはますます強くなっている」と語った。

DASサロンはおまかせ 三洋電機が冷蔵庫寄贈

S(法人)会員の三洋電機(株)は「サロン復活に役立てば」とこのほど、同社製造の大型冷蔵庫=写真=をDASに寄贈した。この冷蔵庫は、会員拡大委員会が3月23日を第1回に毎月1回計画している「DASサロン」の主役になりそう。