会報 205号 03′ 07/01

目次

巻頭随想
「風化する遺跡」インテリア 渡邊敏雄
平成15年総会
新理事4氏を選出
華やかに懇親会
審査評
「第35回毎日・DAS学生デザイン賞」審査委員長 佐野正一(建築家・DAS副理事長)
PLAZA
近藤さんがギターコンサート
粟井さんに大阪府知事表彰
片山さんにベストキュートナー大賞
仲西さんが西鶴館の壁画描く
展覧会あれこれ
テニス大会も再開
和栗さんがV5 DASゴルフコンペ
優勝トロフィー争奪は川西さんがV
北島さんがショットバー開店


巻頭随想

「風化する遺跡」

インテリア 渡邊敏雄

私が今までに訪れた数多くの遺跡、文化遺産の中には風化が進行し、痛ましい姿を曝しているものが可成りある。
ウズベキスタンのサマルカンドの中央、レギスタン広場には15世紀―17世紀の三つのメドレセ(神学校)が美しいタイルで彩られて建ち、青の広場として知られている。それ等は青、緑を主色とし、白色、黄色、褐色を加えた僅かの色であるが、唐草模様、幾何学紋様、アラビア文字など変化のある紋様で埋めつくされた華やかなものである。しかし、美しい緑色と褐色のタイルに覆われたドームには所々にタイルの剥がれた跡が見られる。サマルカンドで一番美しいといわれるグル・エミール廟の丸屋根は青いタイルを主色とし、僅かに白色、水色、褐色を交えた細かいモザイクタイルに覆われ、ドーム頂点から放射状に拡がる64本のリブの作り出す微妙な色彩の変化が我々を魅了する。しかし、壁面を覆うタイルは半ば剥げ落ちて白茶色の下地が露わになっており、残されたタイルには多彩な花模様、唐草模様、幾何学模様、コーランの教えを記したアラビア文字などが往時の華やかさを物語っていた。イスラム教徒の霊廟であるシャーヒージンダ廟ではさらに風化が進み、ドーム屋根は半ばタイルが剥げ落ち、壁面やドーム内部のタイルの剥落も著しい。この廟に使われているタイルにはモザイク手法(デザインに合わせて色タイルを割って模様の通りに埋め込んでいくもの)やユニットの唐草模様や幾何学模様を組み合わせる「描きタイル」手法とか、タイル表面に繊細な文様を深彫りで表現し、それにトルコ石色の釉を施した「施釉彫文タイル」手法など高度な手法が使われているだけに、これを修復するには的確な技術が要求される。現地で修復作業をしていた職人に話を聞くと「職人の数が足りないので、イランからも応援してもらっているが、間に合わない」という。伝統的な建築物の保存修理に職人不足の隘路があることは何れの国でも同様である。イスラムのモスクやメドレセを彩る多彩なタイルは地域的な特性から低火度釉が使われているため耐久性に劣る欠点がある。このためには日常的な補修が欠かせない。 イランのイスファハーンのイマームモスクは世界で最も美しいモスクと思うが、ここでは日常的な補修が絶え間なく行われている様子を見ることが出来た。こうしたたゆみない努力が遺跡を風化から守っているのである。カンボジアのロリュオス遺跡のロレイの祠堂では、外部の壁面を飾る砂岩の金剛力士像やデヴァタ(天女)像が1100年の風雪で半ば溶けたように崩れているのを見ると、遺跡を風化から守る対策が一日も早く取られる必要を痛感する。

昭和2年、京都市生まれ、京都市立美術専門学校(現京都市立芸術大学)図案科卒。安井建築設計事務所にてインテリアデザインに従事、取締役インテリア部長を経て山下設計に移り、その後関西女子美術短大教授。現在フリー。主な作品は、大阪ガス本社、大阪国際空港ターミナルビルのインテリアデザイン。

平成15年総会

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来賓8人を迎えて開かれた総会

来賓8人を迎えて開かれた総会
平成15年DAS通常総会は、6月3日(火)午後3時5分から大阪市北区堂島浜のクラブ関西で開かれ、平成14年度事業報告ならびに収支決算案、同15年度事業計画ならびに収支予算案、一部役員の改選案を審議した。出席会員は67名(委任状提出者74名)。来賓として、近畿経済産業局産業振興部サービス産業室長の児玉桂子氏ら8名が臨席。
佐治信忠理事長が挨拶の後、定款に基づき、議長となり、開会。第1号議案「平成14年度事業報告ならびに収支決算案の件」を付議し、黒田専務理事から(1)期中、11名の退会があったが、会員間の危機感と勧誘活動があいまって12名が新規入会、(2)伝統の学生と高校生のデザインコンペを例年と同規模で実施、(3)事業活性委員会のリードで、計7回の会員交流事業を展開、(4)DAS単独のホームページを開設し、Eメール通信を開局、(5)創立50周年記念事業のための準備金積み立て開始などの報告があった。
決算案では、当期の収入額は予算を37万余円下回る千8百92万余円だったが、支出額も管理費、特に給与手当の大幅圧縮から予算を49万余円下回り、前期繰越金12万余円を加算すると、50周年記念事業準備金20万円を積み立ててもなお、12万23円を次期に繰り越すことができた。この結果、差し引きの正味財産は前期比百16万余円増の百33万余円となったと報告した。このあと滝本隆幸監事より「合法的かつ適正である」と監査報告があり、一同これを可決承認した。
第2号議案「平成15年度事業計画ならびに収支予算案の件」について、黒田専務理事から創立47年を迎える本年も、メーンイベントである学生・高校生デザイン賞の選定をはじめとする各種事業を堅実かつ前向きに推進するとともに、長引く厳しい経済環境から、さらなる経費節減に努めると同時に、時代にマッチした事業展開を模索したいとの説明があり、会員に協力を要請した。
予算案は支出面で給与手当など管理費を引き続き圧縮する一方、通信運搬費では、ホームページ編集費などIT関連費に10万円を新たに計上。総額では、緊縮予算だった前年度予算をさらに35万9千円下回る千9百7万円としたいと提案した。これに対し、一同異議なく、原案通り可決承認した。
第3号議案「一部役員改選の件」を付議、黒田専務理事から、佐々木侃司理事の退会による辞任ならびに田井中邦彦、奥田千代太郎、堀内眞吾、朝野富三の各理事の勤務先人事異動に伴う辞任と、その後任として小森純夫、萩原誠四郎、成相幸良、深井麗雄の各氏を新たに理事に選出する案の提示があり、満場一致でこれを可決承認した。午後3時半、すべての議事を終了、閉会した。

華やかに懇親会

総会、「学生デザイン賞」表彰式の後、会場を約200m離れたサントリー本社1階の「グランソニート」に移し、恒例の会員懇親パーティーが今年も華やかに開かれた。
入賞した学生、来賓を交え約90人がビール、ワインなどの飲み物と次々に運ばれる料理を味わいながら、心行くまで懇談、午後7時お開きとなった。

審査評

「第35回毎日・DAS学生デザイン賞」

審査委員長 佐野正一(建築家・DAS副理事長)

今年は、全国58校から256点の応募があった。昨年とほぼ同数で、デザイナーを目指す意欲はいよいよ盛んなことを感ずる。全体としてしっかりとした技術を身につけ、新しい素材を見つめてみずみずしい感性を素直に打ち出しているようだ。応募作品は、専門分野ごとにDAS会員の厳しい第一次審査があって94点が選ばれ、5月14日の総合審査で金の卵賞1点、部門賞8点と入選79点が決まった。
グランプリ「金の卵」賞に輝いたのは大江由貴さん(グラフィック・パッケージ)の「若い人達の新聞離れに対する提案」。夕刊の小さなスペースに、子供たちが好む話題をテーマに絵とコメントを毎日載せる提案だ。ユニークな発想で一つ一つのグラフィックも高い技術で仕上り、すぐれた作品として審査員一同の一致した高い評価を得た。
部門賞では、玉置知子さん(グラフィック・パッケージ)の「玲瓏窯」は、大型パネルで「浄」「創」「還」の3文字を迫力ある表現で打出し、現代風にまとめた。成田吉宣さん(インダストリアル)の「JOLT」は、ハンドル、フレーム、座部の三つのパーツを組立て、組み替えすることで幾種類かの違った使い方ができる工夫が魅力だ。高柳克史さん(服飾)の「MACRAME」は、寒冷地に伝わる古い編みの手法に従い、現代の服飾として素朴な美しさと強さを表現した。
明歩谷真理子さん(テキスタイル)の「冬の舞」は、練達した技術で染めあげた暗色のしま文様に配した白い雪が美しい作品。野呂学さん(建築)の「さわら水運プロジェクト」は、古い時代の良さを今にもつ地方都市・千葉県佐原市に、舟運を利用して、交流と伝統を活性化させる街づくりを提案した秀作。示唆するところ大きい仕事と考える。道正なつきさん(インテリア)の「ダイニングキッチン」は、一人暮らし向きのインテリアを提案。よく練られた技術でセンスよくまとめている。新しいライフスタイルの試みとして評価された。
北岡麻子さん(商環境)の「フードテーマパーク」の提案は、ヨーロッパの城風のフードパークの計画で、重層のレストランを集めた大がかりな内容を精密にまとめたデザインレベルの高い作品。後藤未来さん(クラフト)の「子どものブランチ」は精度高い技術でまとめあげた椅子である。高い技術とセンスが認められた。
入賞作品全般に手がたい技術が光るように思われた。心から祝意を表し、今後のご活躍を祈る。末筆ながらコンペにご協力いただいた関係各位のご尽力に深く感謝いたしたい。

審査員
【審査委員長】佐野正一(副理事長)【グラフィック・パッケージ】◎大森重志、◎大門敏彦、嶋高宏、前田和紀、延安敬子【ID】◎多田愛実、◎植松豊行、喜多俊之、井上斌策【服飾】◎近藤年子、◎木村益子、山本昌子【テキスタイル】◎坂本忠敬、◎片山葉子、山仲武士【写真・映像】◎和栗敬一郎、◎吉田幸一【建築】◎佐野正一、太田隆信、小林敬一郎、山崎泰孝【インテリア】◎渡邊敏雄、◎旦哲男、柴野晶子【商環境】◎粟井隼一、◎原英雄、見上隆夫【クラフト】◎熊谷皓之、◎夏原晃子、植松曄子、川本蓮【A会員】◎今竹翠【S会員】田中豊稲(毎日新聞)

PLAZA

近藤さんがギターコンサート

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明治45年2月生まれのDAS参与、近藤恒夫さん(A)が3月28日、大阪市北区のザ・フェニックスホールでギターコンサートを開いた。
近藤さんのギター歴は70年を越え、近藤さんを抜きにしては関西のギター界は語れない。ギター曲の作曲家としても知られ、自ら作曲した曲は約200を数える。今回のコンサートはその作曲の一部を2枚のCDに収録したのを記念したもので、近藤さんの実弟でやはりギター演奏家の近藤敏明さん(81)との二重奏も実現した。

粟井さんに大阪府知事表彰

粟井隼一さん(CS)が5月8日、平成15年度の各界功労者として、憲法記念日大阪府知事表彰を受けた。デザイナーとしての長年の功績が評価されたもの。

片山さんにベストキュートナー大賞

シニアーズデイ(日本シニアーズデイ委員会主催)の4月28日、片山葉子さん(TX)が第1回のグッドキュートナー(素敵な大人)賞を受賞した。

仲西さんが西鶴館の壁画描く

和歌山県日高郡中津村に建てられた「井原西鶴記念交流館」の壁面デザインを、仲西多美子さん(TX)が担当、館内8面の壁に、特注の金とレプリカ小判千枚などをコラージュした画をこのほど、完成した。同館は井原西鶴が同村三十木の井原屋敷で生まれたことを記念して今年初めに完成、空間のデザインや展示物の検討が行われてきた。

展覧会あれこれ

個展

大森重志さん(GP)=「墨・水彩による素描展」4月5日~6日=山田区民会館
寺田眞理子さん(CR)=「CONCENTRIC」6月2日~7月4日=都市生活工房
中尾ゆしこさん(GP)=「描・創・想・展」6月26日~28日=LADSGALLERY
多井幸男さん(IN)=「スペイン・イタリー・トルコ」6月30日~7月5日=ギャラリーむん
鴻上和雄さん(PH)=「day by day」6月30日まで=ギャラリーヒカリカメラ
グループ展

「表現×素材(デザイン×ペーパー)」6月9日~22日=岡信吾さん(S)、奥村昭夫さん(GP)、嶋高宏さん(GP)ほか=大阪成蹊大学芸術学部
「第2回素材と匠」6月30日~7月6日=馬渡喜穂さん(CR)ほか=東京都中央区「ギャラリーくぼた」
テニス大会も再開

第6回DASテニス大会が5月17日、箕面市石丸のサントリー箕面総合トレーニングセンターで開かれた。 上田マナツさん(ID)、山岸邦雄さん(ID)が呼びかけ・世話人となって実現したもので、平成11年秋以来、3年半ぶりの開催。ゲストを含む5人が参加し、ダブルスの総入れ替え制リーグ戦により約3時間、試合を楽しんだ。心地よい汗をかいた後は、全員が併設のゲストハウスで、スポーツ談義に花を咲かせた。10月には、第7回が計画されている。

参加者
中尾よしもり、前田浩之(ゲスト・大阪府産業デザインセンター)、上田マナツ、山岸邦雄、黒田耕太郎(順不同・敬称略)

和栗さんがV5 DASゴルフコンペ

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西尾常任理事から理事長杯を受け取る和栗さん(右)
第45回DAS理事長杯ゴルフコンペは「優勝トロフィー争奪3連戦」の最終戦を兼ねて5月22日、兵庫県吉川町のジャパンメモリアルゴルフクラブで開かれ、和栗敬一郎さん(PH)が13、18、22、37回につづく5度目の優勝を果たした。青空、新緑の下、紅一点の青木芳子さん(FS)を含む11人が参加、和気あいあいの雰囲気の中で熱戦を展開した。

優勝トロフィー争奪は川西さんがV

野見康雄さん(GP)デザインの現在の優勝トロフィー(理事長杯)獲得をかけた3連戦(43、44、45回のうちベスト2回のネット合計で争う)は結局、川西明さん(GP)が144・0で優勝した。近く理事長杯が新調され、今秋の第46回から授与される。

北島さんがショットバー開店

北島久嗣さん(GP)が6月6日、大阪市北区梅田2の浪漫倶楽部ビル1階に、念願だったショットバー「カプルス」を開店した。当面、昼はデザイン、夜は店主兼バーテンダーとして、がんばるという。土、日、祝も営業。

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