会報 203号 02′ 12/01

目次
巻頭随想
「地域固有の風景を」建築 山崎泰孝
定例理事会開催
定例理事会について
上期事業報告
下期事業報告
PLAZA
車両デザインを観る
高岡市で鋳造体験
吉野山に学ぶ
梅原さんがV3 DASゴルフコンペ
見事、連続優勝 USD-ゴルフ大会
山中さんに紺綬褒章
大阪府表彰に大門さん
葉室三千子さんは大阪市表彰
土屋さんの作品を再放送

巻頭随想

「地域固有の風景を」

建築 山崎泰孝

私は公共建築賞の審査委員をしたりコンペの審査員や公共建築の設計にも携わっている。その中で、公共建築はどうあるべきかを考えてきた。
建築は、それを使う人にとって使いやすく作るのは当然である。しかし、同時にその生活や芸術文化のありようはそれが育った環境としての建築によって特徴づけられる。すなわち、茶道・華道を始め、日本文化の個性はすべて日本の自然と木造建築、都市の中で育った。
フランスのパリでは、動脈硬化した伝統ある美術を活性化するために、永く守って来たパリの街並の一角を破壊して斬新なポンピドー・センターを作った。その明確な意志のもとに運営も行われた結果、最新の現代美術と現代音楽が育ち、若者の街となって経済の活性化にも及んだ。
これほど建築や都市のありようと、そこを使う人々やそこで育つ芸術文化とは深い関係がある。従って、公共建築のありよう、特にデザインはこうした明確な意志をもって作られるべきである。残念ながら、日本の公共建築の主体である自治体にはこうした文化的認識(公共建築と市民の関係)もなければ明確な意志も見受けられない。 公共建築は様々な建築が立ち並ぶ都市風景の中で、そこに住む住民の心の風景–原風景にならなければならないと思う。民間の建築は経済の論理で機能本位の万国共通のデザインが多い。その中で公共建築は都市風景の骨格を支え、常に変わらずその地域の人々の心の風景を支え、地域固有の風景を持ってその都市の「らしさ」と愛着と誇りの対象でなければならないと考える。
その点、明治・大正・昭和初期の公共建築は日本の国威をかけて立派に堂々とした風格を持つ。近年、我々はレンガ造りのこうした公共建築を次々と新しい機能本位の現代建築に建替えてきた。
賞やコンペの審査の基準に「優れた建築」とあるが、これが問題である。それぞれの賞の選出はそれを選ぶ組織のコンセプトにとって異ならなければならない。従って公共建築であれば公共建築でなければ実現出来ない「優れた建築」でなければならないと思う。今、一般にはこの優秀さが目先の機能本位であったり、今の建築性能で評価する為に民間の一般建築と同列で比較することになる。その結果がPFI(民間委託方式)である。
庁舎建築をPFIでつくることを考えている自治体もあると聞くが、最も多い一般市民が出入りする庁舎建築こそ、経済性に関係なく、風景や余裕、市民の「心の風景」を支え、市民の新しい文化を育てる仕掛けと運営が必要だと考える。更に私は20世紀の近代化の中で無視されがちだった地方の祭りや文化を支えて来た地域性の再構築が21世紀の課題だと思っている。それには各自治体の明確な意志と市民のエネルギーが必要だが、その要となるものこそ公共建築である。従って今後の公共建築はいかにその地域特有の地域性を持つかである。そこで育つ子供や芸術・文化の「個性」の原点は、常に全感覚的に体験しているその地域の「原風景」である。

1935年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一理工学部建築学科卒。坂倉準三建築研究所勤務の後、73年AZ環境計画研究所設立。福井工業大学教授を経て、現在近畿大学文芸学部芸術学科教授。芦屋ルナホールの建築でプラハ国際芸術祭グランプリなど受賞多数。

定例理事会開催

本年度2回目の定例理事会が11月27日午後3時半から毎日新聞ビル4階の毎日会館会議室で開かれた。

平成14年度上期事業報告ならびに下期事業計画=別表(左)参照
「委員会の組織及び運営に関する規定」=別項参照
デザイン賞新審査員選任=3月の会報で紹介=など3報告議案が全会一致で原案通り可決、承認された。出席理事は17名、委任状提出理事は19名だった。
定款第39条(委員会)に基づき、委員会の組織及び運営に関する規定を定める。

理事長は必要に応じて、委員会を設けることができる。理事長は委員会の設置と解散に関して事前または事後に理事会に報告し、承認を得なければならない。
委員は理事長が任命する。
任期は1年とし、再任を妨げない。
委員長は委員会において委員の互選により選任する。
委員会は委員長が招集する。
委員長は理事長の要請があれば、委員会の活動状況を理事会に報告しなければならない。
この規定は平成14年11月27日に発効する。

上期事業報告(平成14年4月1日~9月30日)

第34回学生デザイン賞コンペ 5月15日総合審査/5月31日表彰/5月30日~6月2日展示
第17回高校生デザイン賞 7月より募集開始/11月29日締切り
通常総会/会員懇親会 5月31日 クラブ関西/グランソニート
定例理事会 5月13日 毎日新聞社9階会食室
常任理事会 4月19日/5月13日/7月8日/9月4日
事業活性委員会 9月4日 毎日会館会議室
学生・高校生デザイン賞運営委員会 9月17日 毎日新聞会食室
見学会「聴竹居・サントリー山崎蒸留所」4月27日 45名参加
セミナー「伝統を守る人々=顔・職場・作品」5月24日 19名参加
見学会「旧山邑邸・旧甲子園ホテル(F.L.ライトの遺産)」6月15日 24名参加
見学会「近畿車輌本社工場」トーク「車両デザイン20年」8月22日 30名参加
第43回理事長杯ゴルフ・コンペ 4月25日 ゴールデンバレーゴルフ倶楽部 11名参加 優勝=川西 明、2位=宮川憲明、3位=福田 武の各氏
近畿経済産業局管内デザイン関連団体等交流会議に参加 7月19日 国デ協
会員動向 建築8/商環境15/インテリア14/ID25/テキスタイル12/服飾18/クラフト10/ゲラフィック・パッケージ53/写真・映像6/その他12 D会員計173/A会員26/S会員43/合計242
下期事業計画(平成14年10月1日~15年3月31日)

定例理事会 11月27日/3月下旬
常任理事会 10月7日・11月27日・12月中旬ほか開催
「鋳造体験セミナー」 10月4~5日 富山県高岡市 13名参加
「吉野の自然と山灯りセミナー」 11月16日 吉野山 21名参加
「男のアクセサリー展」企画会議 11月5日 毎日新聞社会食室 12名参加 同作品展12月9~19日) 平和紙業ペーパーボイスギャラリー
事業活性委員会 10月7日 毎日新聞社会食室 8人出席 毎日新聞学芸部長の田中豊稲氏(A会員)、平和紙業の岡信吾氏(S会員)を招く
第19回USD-Oゴルフ大会 11月6日 北六甲CC西コース 7チーム25人参加 DASからはA(大浦丈史郎、井上圭一、福田武、和栗敬一郎各選手)B(梅原豊和、野見康雄、飯田吉秋各選手)の2チーム7名が出場し、A優勝、B5位
第44回理事長杯ゴルフコンペ 11月12日 ジャパンメモリアルGC 11名参加 優勝=梅原豊和、2位=北島久嗣、3位=福田武の各氏
第17回毎日・DAS高校生デザイン賞コンクール 11月29日応募締切り 12月中旬、第1次専門(部門別)審査 DAS会議室 平成15年1月15日 総合審査 南港ATC・デザイン振興プラザ 1月31日~2月5日 表彰・展示 エルおおさかギャラリー
第35回毎日・DAS学生デザインコンペ 3月28日応募締切り
理事長杯新春囲碁大会 平成15年1月11日(土)
DAS事務局 新年交流会企画委員会 11月28日 大門敏彦委員長ら9委員のうち7名参加 新委員長に林 正雄氏を互選
2003年新年交流会 1月17日(金)
セミナー「伝統を守る人々=顔・職場・作品=パート2」 2月予定
PLAZA

車両デザインを観る

「近畿車輌本社工場の見学会とトーク」が8月22日行われ、30人が参加した。東大阪市の近畿車輌本社工場で国内外向けの地下鉄や路面電車の製造工程を見学したあと、大阪市の平和紙業会議室に会場を移して、今回の世話人で名古屋学芸大学メディア造形学部長の木村一男さん(OT)のトーク「車両デザイン20 年」を聴いた。木村さんは出席の大学生からサインをねだられるモテモテぶりだった。

参加者
浅田勝、野々村良起、宮川憲明、トーマス・ペリー、夏原晃子、大門敏彦、中谷行義、中根清、平岡美子、川西明、井上圭一、原英雄、馬渡喜穂、飯田吉秋、千田要宗、多田愛実、鴻上和雄、片山葉子、岡信吾、植松曄子、木村一男、永山伯子、黒田耕太郎ほかゲスト多数を含め30名(順不同、敬称略)

高岡市で鋳造体験

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鋳物制作に取り組む参加者たち
「工芸都市高岡・鋳造体験セミナー」が10月4、5日の1泊2日で、富山県高岡市で行われた。国立高岡短大教授の森田力さん(ID),前田和紀さん(GP)と鋳造に詳しい馬渡喜穂さん(CR)を世話人・講師に、13人が参加。高岡市デザイン・工芸センターにお邪魔して、鋳造品を制作するとともに、市内の釣鐘などの鋳物製造工場を見学した。

参加者
平井宥子、野村るり子、山崎泰孝、横尾浩、藤田隆、米良健一、夏原晃子、大森重志、湯川哲比古、森田力、前田和紀、馬渡喜穂、黒田耕太郎(順不同、敬称略)

吉野山に遊ぶ

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夕焼けを背に千田さん=右端=の話に耳を傾ける参加者達
「吉野の自然と山灯りセミナー」が11月16日、世話人の千田要宗さん(IN)のアトリエ「景色工房」を会場に開かれた。地元の老舗製材会社で吉野杉の製材工程を見学したあと、参加者21人は車で吉野の大自然を一望できる景色工房へ。吉野町森林組合、同町商工会の人たちの話につづいて、千田さんが町の活性化を兼ねて展開中の「山灯り」活動を語った。このあと、くれなずむ山々の紅葉をめでながら、パーティーを楽しんだ。

出席者
宮川憲明、宮川裕子、浅田勝、井上圭一、大門敏彦、大谷隆、飯田吉秋、大森重志、中務頼子、古田義弘、古田千鶴子、古田弥枝、石橋利夫、佐々木煕、佐々木淑子、平井宥子、竹内一郎、富本公子、谷村節子、千田要宗、黒田耕太郎(順不同、敬称略)

梅原さんがV3 DASゴルフコンペ

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西尾常任理事から理事長杯を受け取る梅原さん
第44回DAS理事長杯ゴルフコンペは「優勝トロフィー争奪3連戦」の第2回として11月12日、兵庫県吉川町のジャパンメモリアルゴルフクラブで開かれ、梅原豊和さんが25、32回につづく3度目の優勝に輝いた。雨上がりの時折、青空がのぞく暖かい天候の下、11名が参加。優勝経験者ばかりのベテラン勢に交じって、北島久嗣、林正雄、黒田耕太郎の3名が初出場。

見事、連続優勝 USD-Oゴルフ大会

第19回USD-O(大阪デザイン連合機構)ゴルフ大会が11月6日、北六甲カントリー倶楽部西コースであり、DASから2チームが出場。Aチーム(大浦丈史郎、井上圭一、福田武、和栗敬一郎各選手)が昨年につづき優勝、Bチーム(梅原豊和、野見康雄、飯田吉秋各選手)は5位に入った。

山中さんに紺綬褒章

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山中澄江さん(FS)=写真=が今年度の紺綬褒章を受章した。山中さんはフランス留学を通じて知った画家たちの作品を時には頼まれ、時にはその才能にほれて長年、収集してきた。こうして日本に渡った作品が売買されるのは見るに忍びないと、国への寄贈を決意。政府がその日本文化向上への功績を認めて、褒章授与となった。作品はコンスタンチン・テレスコヴィッチ、藤田嗣治、小磯良平、浜口陽三、南桂子らの油絵、版画。

大阪府表彰に大門さん

大門敏彦さん(GP)が多年、大阪府の産業の発展に尽くした功績で平成14年度大阪府商工関係者表彰を受けた。

葉室三千子さんは大阪市表彰

葉室三千子さん(A)が公共関係(屋外広告物規制)に長年の貢献をしたとして今年の大阪市民表彰を受けた。

土屋さんの作品を再放送

ブライト・アーチスト(光の画家)として活躍中の土屋壽満さん(CS)の作品を音と動く映像で描いたNHK・BSハイビジョン「虹の王国」が11月19日夜の「ハイビジョン・アーカイブス」のトップで紹介された。「虹の王国」は最初、平成2年11月に放映されたが、今回、ハイビジョン作品の傑作特集として再び、取り上げられた。