会報 204号 03′ 03/01

目次

巻頭随想
「星に願いを」グラフィック 嶋 高宏
審査評
「新しい発想、感性に優れ」総合審査委員長 佐野正一(建築家・DAS副理事長)
PLAZA
華やかに新年交流会
第2回染織文化セミナー開く
古田さんがテレビに出演
佐野さんが「建築家三代」出版
志水さんが優勝 新春囲碁交流会

巻頭随想

「星に願いを」

グラフィック 嶋 高宏

1973年、今から30年前、アフリカのキンシャサでモハメド・アリにチャンピオンの座を奪われたジョージ・ファーマンは、45才でもう一度ヘビー級のチャンピオンに返り咲いた。ボクシングに興味のない方にはヘビー級がどんなにすごいかご存じないだろうが、ボクシングはフライ、バンタム、フェザー、ライト、ウェルター、ミドル、クルーザー、ヘビー級の体重別クラスに分かれていて、ヘビー級には体重制限がない。
もうひとついえばフライ級とは体重50kg前後の選手が打ち合うのだが、このクラスはアメリカではボクシングのカテゴリーに入らないのではないかと思うくらい人気がない。180cmから2m、体重90キロから100キロもある大男が殴り合いをする試合を見たら、軽量級の試合はさぞ迫力に欠けることだろう。ヘビー級のパンチ力はといえば、鉄のハンマーでたたいたほどの破壊力があることを大まかな目安として想像してもらえればよい。だからファーマンの45才という年齢でのチャンピオンなどというのは不可能に近く、奇跡に近い偉業だった。記者達は争ってファーマンに質問をした。「あなたの年で試合に勝つために、あなたは何をしたのですか」と。ファーマンはにっこりと笑って「星に願ったのさ。誰だって星に願えば必ず願いは届くもの」と答えたのだが、この彼の答え方がとても好きなのである。実際に彼は死にものぐるいで練習をしたのであろうし、不安もあっただろうと想像はつく。ちなみに彼がチャンピオンにもう一度挑戦した動機は、チャンピオンの座を降りて4年後にボクシングを辞め、地元の伝道師をしていたが、資金が足りなく、子どもたちを幸せに導くため、彼は教会の資金不足を補うためだった。だから星に願いをというのはあながち自分だけの問題としてではなく、子供達の未来を考えた上で、大人としての発言だったのだが、ボクサーとしてはまさに秀逸、しかもしゃれた発言だ。このような場面でこんなしゃれた発言ができるのは、カメラの向こうにいる視聴者に対して自分の位置を理解した上でのエンターテイメント性なのだと思う。そういう意味で我がDASも未来の子ども達のために光り輝くようなデザイン集団としてのエンターテイメントな行動をしたいものだとファーマンの言葉を聞いて考えさせられる。DASという協会でしか発信できない知的でエンターテイメントな発言や行為が、いま落ち込みムードの社会を活性化する原動力は、客を満足させるエンターテイメント性ではないだろうか。そして、その可能性はDASという組織が秘めている。それを創造するのがデザイナーだから。私は実はデザインこそ社会で最も知的で美しく、エンターテイメントなものでなければならないと思っているからだ。 DASが明日に必要なデザイン集団であるために、真剣にいまから皆で星に願いをかけてみる気はないですか。

1938年大阪生まれ。関西大学社会学部新聞学科中退。在学中より重成基氏に師事。ネクタイ会社宣伝部、広告代理店を経て1973年(株)嶋デザイン事務所設立。世界ポスタートリエンナーレトヤマ、N.Y.グラフィスなど年鑑に多数収録。異分野では、金沢国際ガラス工芸展に入選他。大阪成蹊大学芸術学部教授。

審査評

「新しい発想、感性に優れ」

総合審査委員長 佐野正一(建築家・DAS副理事長)

今年の高校生デザイン賞には、昨年を上廻り全国十五校612点の応募があった。デザインをめざす指向の高いことは心強い。全体としてデザインレベルが向上している。今後一層のご精進を期待したい。
応募作品はまず、部門別にDAS会員の専門審査員による第一次審査で、120点が選ばれた。ついで一月十五日の総合審査員による第二次審査の結果、グランプリ「銀の卵」賞1点、部門賞5点と佳作4点の入賞作品と入選作品104点を選んだ。さらに入賞・入選作品多数を出した大阪市立工芸高校に「学校賞」を贈ることを決めた。入賞、入選された方がたに心からお喜び申し上げる。
グランプリ「銀の卵」賞に輝いたのはクラフト部門、香川県立高松工芸高校2年の長尾有希子さんの「あかり」で、あたたかな感触の大きなてのひらの上に、大きな卵状の発光源を包むようにのせて柔らかな光をつくっている。照明の実用性はともかく、なによりもこまやかな配慮が行き届いて感性優れた作品となっているとして審査員の一致した高い評価を得た。 次に部門賞。グラフィック部門中谷吉英君の「HANA―HAKO」は、包装用パッケージのオリジナルな提案をした作品で、紙素材の組立てを工夫して簡易な取扱いながら多彩なディスプレイ効果を生む技術レベルの高いことが注目された。インダストリアル部門中谷吉英君の「超コンパクト車椅子」は、車椅子を使用しないとき折りたたんでコンパクトに収納するように綿密に工夫した作品で、本来の機能を失わず、十分実用性ある提案として高い評価を得た。インテリア部門古賀和寛君の「CUBE超成長する家」は、単位となる住空間を居住条件の変化に合せ組み替える住まいの提案である。着想の新鮮さが注目を集めた。テキスタイル&服飾部門辻るりこさんの「トラと笛吹き」は、テキスタイルの作品。素材のシルクを染め、幻想的な主題のスケッチによって織りあげ、一つの物語りをつくりあげた優れた労作である。クラフト部門福濱奈津実さんの「在」は、木製の小さな押出をもった戸棚をつくる試み。実用上の完成には達していないが、発想が新しく、技術的にも懸命に努力の跡が見られ、魅力ある作品と認められた。
佳作・入選作品については紙数の関係で評を割愛させていただく。
最後に、本コンクールの開催にご尽力下さった審査員、教育指導関係各位に厚く感謝申し上げたい。

PLAZA

華やかに新年交流会

ホームページの表紙の下で繰り広げられた新年交流会
DAS新年交流会が1月13日午後5時半から、今年も大阪市北区の北新地「水響亭」で開かれ、75人が参加した。交流会企画委員長の林正雄さんと同委員の片山葉子さんの息の合った司会で始まり、冒頭、佐野正一副理事長が「DASとしてもう一度、都市美研究に取り組みたい」と年頭あいさつ。佐治信忠理事長の音頭で乾杯し、新年らしい華やかで、和やかな歓談の輪が広がった。今回も佐々木英子さん手作りの干支の羊をかたどったメニューカードが大人気。サントリー、毎日新聞社、原口など提供の豪華景品が当たる福引でクライマックスを迎え、恒例の贈り物交換の品とサントリーミュージアム提供のカレンダーを手に手に、午後7時半、お開きとなった。

新年交流会企画委員会
林正雄委員長、浅田勝、石橋利夫、岩本恵三、片山葉子、佐々木英子、大門敏彦、野々村良起のみなさま、ご苦労様でした。

第2回染織文化セミナー開く

谷川セミナーに耳を傾ける人たち
常務理事の谷川順一さん(TX)による「日本染織文化」セミナーが2月26日午後3時、大阪市中央区南船場の平和紙業会議室で開かれた。「伝統を守る人々(西日本編)」と題し、昨年5月に開催の東日本編につづくもので、前回を約10人上回る31人が参加した。京友禅、加賀友禅、琉球紅型などの染や博多献上織などの織の伝統を力を抜くことなく守り続ける人間国宝らの姿をスライドで紹介しながら、谷川さんは「日本人は世界に誇れる独特の色を持つに至った」と締めくくった。約2時間のセミナーの後、参加者は谷川さんを囲んで、ビールと軽食のパーティーを楽しんだ。

参加者
浅田勝、上田マナツ,多井幸男、大森重志、岡信吾、片山葉子、門坂喜美子、川本蓮、近藤年子、坂本忠敬、佐々木英子、柴野晶子,志水善一、大門敏彦、立亀三沙、富本公子、平井宥子、馬渡喜穂、宮川憲明、渡邊敏雄、植松曄子、永山伯子、黒田耕太郎ほかゲストを含め31名(順不同・敬称略)

古田さんがテレビに出演

古田義弘さん(AR)が3月2日夜、ABCテレビで放映の1時間番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」に出演、匠の技を披露した。
「住環境の栄養士」を自称する古田さんは、家が狭いため、遊びに来るお孫さんに楽しい思いをさせられないと悩む神戸市内の老夫婦の住まいを700万円かけてリフォーム。見違える広さの台所と収納式の畳ベッドの付いた寝室、さらにつくばいのある癒しの庭が完成し、老夫婦は涙を流して喜んだ。

佐野さんが「建築家三代」出版

建築家三代
副理事長の佐野正一さん(AR)がこのほど、自伝的評論「建築家三代」(日刊建設工業新聞社発行、本体2,850円)を出版した。三代とは、安井建築設計事務所を創設し、継承し、発展させている安井武雄、佐野正一、佐野吉彦各氏のこと。大正、昭和、平成の日本の建築史に欠かせない一冊となるだろう。

志水さんが優勝 新春囲碁交流会

山中7段から理事長杯を受け取る志水さん(中央)
年明け恒例のDAS新春囲碁交流会が1月11日、午前11時からDAS事務局を会場に開かれ、腕自慢の7人が盤上に火花を散らした。熱戦の結果、決勝はそれぞれ2勝して勝ちあがった森口武彦4段と志水善一2段の対戦となり、志水さんが勝ち、優勝と新3段昇格を獲得した。表彰式では、世話人代表の山仲武士7段から志水さんに理事長杯と新年寿のサントリーウイスキーが贈られたほか、全員に参加賞が手渡された。

参加棋士
山仲武士7段(TX)、芝野吉生6段(S)、森口武彦4段(ゲスト)、谷口廣之3段(ゲスト)、志水善一2段(GP)、郡司修三1級(A)、松井昭人1級(ゲスト)