会報 213号 06′ 03/01

目次

巻頭随想
パリ個展報告 ~自然から色をいただく~ テキスタイル 平岡美子
第20回高校生デザイン賞
小倉ひとえさんに「銀の卵」賞
審査評
「第20回・毎日・DAS高校生デザイン賞」 審査委員長 佐野正一(副理事長・建築家)
都市美だより
「緑」をテーマに、都市美はがんばっています 都市美委員長・千田要宗
PLAZA
展覧会・イベントあれこれ
茶運人形をハイテク復元
2006新年交流会
新春囲碁大、福島さんが2連覇

巻頭随想

パリ個展報告 ~自然から色をいただく~

テキスタイル 平岡美子

かつて化学染料で色を出していた時は、その求める色の染料の割合で、糸を染め、織りの作品を創ってきました。
しかしこの数年、自然にあるもの(樹・草・花・実・虫)を用い、色を抽出する面白さ、不思議さに取り付かれ、糸を染め、布を染めています。自然の染料はその入手のタイミング,その時の気候に左右されます。いわゆる色には旬があります。いつでもいいわけではありません。また抽出の時間、水など様々な要因によって色は微妙に変わります。
同じ染材でも、同じ色になるとは限りません。自由に色をあやつれるどころか、すればするほど化学染料では得られないその色味のもつ不思議さに唖然とします。まさしく自然から色をいただく気持ちです。
フランス中西部を流れるロワール河の四季の表情を、こうして染めた繊細な絹糸、木綿糸、麻糸で織ってみたら、ロワール河の微妙な空気の流れを感じさせ、伝わるのではと思い、綴織で作品を創り昨年10月、パリで個展を開くことになりました。
フランスにおいて、天然染料で染めたものはウールには記録が残っていますが、天然染料で染められた綿、絹、麻に関しては、藍染しか一般の人は知らないので、どこまでこの色味の美しさを伝えられるかが、今回の個展の課題のひとつでした。
オープニングの日、そんな不安をもって臨みました。だが、何度も何度も作品を観て、質問をしてくれる。そして、幸せにみちた表情を作者の私に示してくれる。成功でした。
彼らが帰る時に記帳をお願いすると、名前だけでなく、感想を記してくれました。草木染めに色の香りを感じ、織りの表現が単に技巧でなく、アート的表現となって、自然の感じが伝わるなど、すぐに自分の感想を表現できる文章力に、こちらのほうが感動しました。
フランス人の奥深い文化を感じた日々でした。 帰国して、その感慨に浸る間もなく、色の説明用に染めた板締めの絹のスカーフと染めにくいといわれる綿の手袋を大阪・靭本町のショップ「Cula」で発表しました。自然からいただいた優しく、時には鮮やかな美しい色を、日本の人たちにも観ていただくことができました。
また、織りの作品は今年11月に南都七大寺の一つである奈良の「大安寺」で発表できることになりました。パリの作品と一緒に、新たに大和の自然の美しさを綴織で制作したものを、発表する予定です。

京都市立美術大学工芸科染織専攻卒業。ミサワインテリアスクール上級卒業。大和商事(株)、東レ(株)、日商岩井(株)を経て、平成4年HIRAOKA PLANNING ROOM設立、主宰。日本テキスタイルデザイン協会会員、染織品と染織文化財研究会会員。

第20回高校生デザイン賞

小倉ひとえさんに「銀の卵」賞

デザイン甲子園「第20回毎日・DAS高校生デザイン賞」コンクール(毎日新聞社、DAS主催、サントリー協賛)は1月 19日、大阪市南港で総合審査を行い、第1次審査に合格した98点から最優秀「銀の卵」賞1点、部門賞6点、佳作5点、入選80点、学校賞1校を決定。応募総数は222点だった。
入賞・入選作品は2月8日~12日、今年で2回目となる大阪市港区のサントリーミュージアム[天保山]に展示、公開された。表彰式は8日午後 2時から、展示会場に隣接の「展望ルームであり、毎日新聞大阪本社副代表の深井麗雄氏、サントリー文化事業部長の若林覚氏から正賞、副賞(サントリー賞)が手渡された。学校賞には3年連続の神戸市立六甲アイランド高校に決まり、賞状と副賞(コクヨ賞)が授与された。午後3時からは祝賀・懇親パーティが会場9階「スカイラウンジ」に入賞関係者と第19回「銀の卵」賞受賞者らを招き、行われた。

審査評

「第20回・毎日・DAS高校生デザイン賞」

審査委員長 佐野正一(副理事長・建築家)

全体に高レベル、堅実
今年、第20回となる毎日・DAS高校生デザイン賞コンクールには全国から12校222点の応募があった。昨年に比べやや少ないが、デザイン志向の高いことは変わりなく、全体として技術レベルの高い堅実な制作が多く、将来の発展が感じられた。
応募作品は、部門別にDAS会員の専門審査員による第1次審査で、6部門98点が選ばれ、1月19日の第2次総合審査で、グランプリ「銀の卵」賞1点、部門賞6点・佳作5点の入賞作品と、入選作品80点を選び、さらに入賞・入選作品多数を出した神戸市立六甲アイランド高校に学校賞を贈ることを決定した。
入賞・入選者に心からお喜びを申し上げ、今後一層のご精進を期待いたしたい。
グランプリ「銀の卵」賞に輝いたのは小倉ひとえさん(クラフト部門)の「品 」。金属素材を使ったテーブルウェアを確かな技術で、新しい感覚でまとめている。そのスキのなさが多くの審査員の高い評価となった。
つぎに部門賞作品6点。グラフィック、高田朋恵さんの「シッポのちぎれたメダカ」は、やなせたかしの詩によって絵とことばを添えて一冊の絵本としたもの。その詩情あふれた表現が見事。インダストリアル、松谷大輔さんの「身障者のための移動補助具」は、車イスの座をそのまま高い位置に持ち上げバリアを一つ解除する工夫で、技術上の解決とデザインの処理へひたむきな姿勢が評価された。インテリア、平田容子さんら7人の「遊んでんしゃ・学んでんしゃ」は、大型木工機器をうまく使って機関車を作り、これにいろいろな生活機能を付加して多彩な遊具としたもの。多人数の協同作品として注目される。テキスタイル、赤松美紀さんの「和×洋」は、繊維加工の基本である裂地・紋様の混織をつかって和・洋のテーマをパネルに仕立てる制作。センスのいい仕事と賞讃された。服飾、森本愛美さんの「ステンドグラス」は、ノートルダムのステンドグラスのイメージで生地を選びカットして作った作品。ボタンの選択もいい。クラフト、宮﨑初実さんの「柔」は、木工作品、素材のケヤキを柔らかな造形が美しい。
紙幅の都合で佳作・入選作の評は割愛することをお許し願いたい。
コンクール開催にご尽力くださった審査員、教育指導関係各位に厚く感謝申し上げる。

審査員(敬称略、◎は総合審査員)
【審査委員長】◎佐野正一【グラフィック】◎杉崎真之助、◎嶋高宏、奥村昭夫、前田和紀、牛島志津子【インダストリアル】◎飯田吉秋、◎森田力、添田允典、石橋利夫【テキスタイル】◎坂本忠敬、◎片山葉子、大東恒夫【インテリア】◎千田要宗、◎刈田晃、鬼田勲◇服飾=◎中務頼子、◎立亀三沙、富本公子【クラフト】◎植松曄子、◎馬渡喜穂、寺田眞理子、広瀬カヤ子【総合】◎今竹翠(A会員代表)、◎荒木茂(S会員代表、毎日新聞学芸部長)【教育現場】=◎山崎裕彦(大阪府教育センター指導主事)

都市美だより

「緑」をテーマに、都市美はがんばっています

大阪の街をデザイナーの目で、美しく、艶のある街にしたい。
色が豊かで、艶がある。それは昔の大阪のことでしょうか。みずみずしい水都大阪の面影は今どこに。しかし、東京の「理」に対する大阪の「情」が人々の心の中にかすかにでも残っているとするならば、かつての「うるおいと艶」のある大阪の景色を取り戻したい。
DAS都市美委員会では、その活動の第1歩として、大阪の街に緑を効果的かつ美しい景観として増やしていくことをテーマに選んだ。
「景観としての緑化」を考えるとき、それはあまりにも語り尽くされていながら、大阪においては、あまりにも実現されていないことが分かる。街路に秋の色彩をもたらす落葉の木々は、枯葉が迷惑ということで、色づくまでに斬髪される。公園の大きな木は、用心が悪いという。時に季節の移ろいを知らせる野草など大阪にはないかのごとくである。ランドスケープとは土木用語でしかないのかと思ってしまうくらい「景観としての緑化」は実現されていない。
このような問題提起は、数多く、長い間、それこそ大阪万博の頃から語られている。今や議論が求められているのではなく、何らかの実行が求められている。
都市美委員会では、私達デザイナーの実現可能なプログラムを組み、活動を進めていきたい。幸いDASには様々な分野のデザイナーが集合している。街を美しくするのには何も都市計画や建築だけのことではなく、生活を総合的に考えることを起点にすることから生まれるものと考える。当面の活動としては、大阪の東西、浪速筋から谷町筋、南北は梅田から難波のエリアを対象に、路・園・玄の緑の現状を知り、とりわけ公園に着目し「公園の再生」に対する提案とその具体化を目指していく。
このエリアの公園の一つでも、人々の行き交う季節の移ろいを楽しめる公園にできるならば、賑わいとうるおいのある艶っぽい大阪が再生されるかもしれない。私は15年前に、吉野山の美しい山林の景色に出会い、美しい山は言葉では尽くせない400年を超える人の手を経ていることを知った。大阪の景観としての緑化も、その実現には永い時を必要とすることだろう。そして、この何とも楽しげな集まりに興味を持たれる方々は是非、ご参加、ご協力をお願いしたい。
(都市美委員長・千田要宗)

PLAZA

展覧会・イベントあれこれ

個展

植松曄子さん(CR)「break through」平成17年10月10日~15日=茶屋町画廊
平岡美子さん(TX)「Natural WorksⅡ」12月10日~23日=Cula
金野隼人さん(ID)「山川ラタン物語」平成18年2月21日~28日=京都・空鍵屋
グループ展

岡信吾、嶋高宏、大門敏彦、馬渡喜穂各氏「アクセサリー展」平成17年12月19日~24日=茶屋町画廊
喜多俊之、馬渡喜穂各氏ほか「第7回くらしデザイン工房」平成18年3月2日~8日=近鉄百貨店上本町店
岡信吾、延安敬子、馬渡喜穂、吉川博教各氏ほか「日本新ものづくり展」会期、会場同上
演奏会

岡野弘幹氏ほか「風の楽団」1月30日=TORII HALL
同氏ほか「カムナガラのつどい」3月5日=大阪市中央公会堂
茶運人形をハイテク復元

アイ・シー・アイデザイン研究所(飯田吉秋代表取締役)はこのほど、江戸時代のからくり装置「茶運人形」を3次元CADでデータ化し、ハイテクで復元した。計51個の部品が高い精度で動き、壊れにくく、虫や湿気にも強い現代版からくり人形の誕生。桐箱入りで、1体35万円(税込み)で販売中。

2006新年交流会

20081020-213_01
2006新年交流会が1月17日午後6時から、今回で2回目となる大阪・西梅田のガーデンシティクラブ大阪「オリオンの間」に、61名が参加して開かれた。
今年のメーンテーマは「DAS創立50周年記念事業」。谷川順一副理事長の乾杯の音頭で幕が開き、正面にはDASの垂れ幕とともに、50周年記念事業のロゴマークと記念誌会員作品集のフォーマットが飾られた。持松和弘・新年交流会企画委員長の司会で進められ、大門敏彦・創立50周年記念事業企画委員長が記念事業の概要を説明した。また、佐野正一副理事長が「デザイン部門のすべてを包含する世界でも類のないDASにふさわしい記念事業を、会員の一致協力で」と年頭あいさつ。
干支のイヌを題材にした色紙展も行われ、参加者全員による審査の結果、グランプリ(理事長賞)には浅田勝氏(GP)の切り絵作品が輝いた。2席以下は片山葉子、富本公子、佐々木英子、嶋高宏、山田崇雄、巽正和、牛島志津子、中尾少風、海老原直子の各氏。それぞれに豪華賞品が贈られた。

賞品提供
コクヨファニチャー、サントリー、竹尾、原口、平和紙業、毎日新聞社(50音順)=ありがとうございました。

新春囲碁大、福島さんが2連覇

20081020-213_02

福島三雄5段
新年恒例の第31回新春囲碁大会が1月14日午前11時から、会場をこれまでのDAS会議室から神戸市東灘区の「御影囲碁クラブ」に移し、開かれた。
敗者復活のトーナメント戦で行われ、決勝は無敗の福島三雄5段と敗者復活の志水善一3段のこの日二度目の対決となった。福島氏が中押しで勝ち、前回に続く優勝を果たし、6段に昇格した。
参加は5名と少なかったが、熱戦に次ぐ熱戦で優勝戦が終了したのは午後7時を回っていた。この後、表彰式が行われ、理事長杯の授与に続いて、全員に豪華賞品が贈られた。

参加棋士
福島三雄新6段(A)、奥村幸一4段(参与)、志水善一3段(GP)、谷口廣之3段(ゲスト)、郡司修三1級(同)